世界No.1の導入実績を誇るCRM(顧客関係管理)ツール『Salesforce』。トライコーンはこれと連動するメール機能拡張アプリケーション『Autobahn for AppExchange』を開発し、運用しています。2007年のリリース以降、多種多様な業種の企業に導入され、常に細かな機能追加やユーザビリティ改善がなされてきました。そして迎えた2021年夏、ついにバージョン2.0をリリース。このアップデートを機に、開発や運用のストーリー、そしてトライコーンのエンジニアならではの特色などについて、エンジニア社員2名に語っていただきました。
Y.T(入社19年目/中途入社)
プロダクトエンジニアリング部 ゼネラルマネージャー
システム第二グループ・SREグループ・品質管理グループ マネージャー(兼任)
自社SaaS開発や全体開発スキームの自動化・最適化、品質管理などのマネジメントを担う。
Autobahn for AppExchange開発の第一任者。
U.S(入社11年目/新卒入社)
プロダクトエンジニアリング部
システム第二グループ リードエンジニア
3年間のカスタマーサポート担当を経て、Autobahn for AppExchange運用担当へ。
今回の新バージョンリリースでは、企画・設計・開発を担った。
まだ日本にないものをかたちに。
直談判からスタートしたプロダクト開発。
Autobahn for AppExchangeが誕生したのは、創業から11年経った2007年。トライコーンは約30名の社員を抱え、そのうち3分の1にも満たない少人数でプロダクト開発に従事していました。
当時の主力商品は、創業者が開発した独自のデータベース連動型メール配信システムAutobahn。しかし、その売上に伸び悩んでいました。そこで、もっと会社やサービスの強みの幅を広げていくべく、Y.Tはもう一人のエンジニアとともに大きな一歩を踏み出します。
自由に立ち上げを任せてもらえる代わりにミッションを託されたY.Tは、さっそく新規プロダクトの企画をスタート。企画検討のため他社の商品を調べる中で見つけたのが、CRMツールのSalesforceでした。
もともとデータベース連動型メール配信システムを開発・運用していたというノウハウがあったからこそ、トライコーンにしかない強みを生かせる新たなプロダクトとして走り出すことができたと言えます。
しかし海外にモデルケースはあったものの、国内でのAppExchange事例は稀。国内他社の事例を参考にすることができず、前途多難な日々がはじまりました。
暗中模索の中、幸いにもSalesforce側の担当者が非常に協力的に動いてくれました。当時はまだAppExchangeが国内で普及していなかったことが手伝い、問い合わせるとすぐ回答を得ることができたのです。
当初の企画段階で意識していた直近のゴールは何だったのか。Y.Tは当時を振り返り、こう語ります。
定めた目標達成に向けて、ひたすら技術資料のサンプルを書き換え、Salesforceと試通信を行い、またやり直し……とトライアンドエラーを繰り返し続けた二人。社長から任されたミッションをクリアするべく定めた、3ヶ月という目標開発期間内で仕上げられるよう走り抜けました。
こうして無事リリースにこぎ着けたAutobahn for AppExchange。開発から程なくして、別のプロジェクトへ移ることとなったY.Tの手からは離れてしまいましたが、そこから14年間、アップデートを続けながら顧客のマーケティング活動を支え続けています。

機能追加より、不具合修正。
顧客増に合わせて見直した“負の遺産”。
U.Sが入社した2011年頃は、Autobahn for AppExchangeの利用顧客数が現在の約10分の1程度でした。まだ顧客数が少なめだったことに加え、営業からサポート、運用までを一つの部署で担う体制だったことから、よりダイレクトに顧客の声を反映。次々と機能を追加していきました。
当初こそ売上に伸び悩んでいたAutobahn for AppExchangeですが、2014〜15年頃、顧客数が徐々に増加します。それは、2010年代頃から国内で広くクラウド化が叫ばれるようになり、Salesforceが国内に浸透してきたことが主な要因。さらに一部ターゲットへの集中的な営業戦略の効果もあってか、Autobahn for AppExchangeはベースツールの拡大とともに順調に売上をアップさせていきました。
しかし、顧客が増えるにつれ、徐々に運用面の負荷に変化が現れます。
これまで、運用メンバーは何よりもまず新規機能追加を優先してきました。しかしその過程で見逃してしまっていた小さな不具合が、年々蓄積。こうした過去の”負の遺産”たちへの対応が急務でした。
今でこそAutobahn for AppExchangeの主担当として運用に尽力するU.Sですが、配属当初はカスタマーサポートがメインで、営業や開発などの業務を兼任。その後、本格的にエンジニアとして運用を担当するようになりました。このときのことを、U.Sはこう振り返ります。
ただU.Sは、カスタマーサポートとして問い合わせ対応や軽微なプログラム修正などをおこなってきた、Autobahn for AppExchangeをよく知る人物。プロダクトへの理解度が高く知識の地盤があったため、苦しみながらも自力で読み解くことに成功し、今や主戦力として活躍しています。

2人のエンジニアからみた、
トライコーンの開発スタイルと風土。
新卒で入社後、カスタマーサポートを経てエンジニアに転向したU.S。自身が開発や運用のプレイヤー側に立ったことで、“エンジニア”という職に、今何を思うのか。エンジニアを志しチームに加わるメンバーたちの姿を思い浮かべながら、こう語ってくれました。

各プロセスを確認しながら、仕様書づくりやレビューを抜かりなく行う。それは安全性・安定性が重要なサービスを提供しているからこそ貫かれてきた、トライコーンの大事な信念だと言えるかもしれません。また、こうした開発フローの中で感じるトライコーンの空気感についても話してくれました。
リリース検討会と呼ばれる会議を開き、立場に関係なく意見を出し合う。比較的少人数ながら組織で順序立てて進行するスタイルは、“トライコーンの色”とも言えるでしょう。
着実なフローに基づく、安定感のある開発スタイル。理解を得られるロジカルな理由を提示すれば幅を広げられる、自由度の高さ。こうした特色が、顧客が安心して利用できるサービスを生み続けられている秘訣なのかもしれません。